#13 第6話 サマンサの来襲(2)

まるで暴風雨のようにやって来たのが、ルーシーの伯母のサマンサだ。料理研究家にして毒舌家。常に何かにイラだち、そのストレスが沸点に達した時、きまってルーシーの家を訪れるのだった。
あいさつもそこそこに、玄関の汚れを見つけ、家具の配置の不備を指摘し、キャロルが作ったレモネードの批評をひとくさりしたサマンサは、
――自分の隣家の騒音を悩み、低俗なテレビ番組を嘆き、料理研究家たる自分の評価の不当性を延々と説いた。
時に激しく、時に涙しながら彼女の“独演会”は夜がふけるまで続いた。ひとり気がすんでベッドに入ったサマンサは、足が冷えて眠れないと言って、夏だというのに厚手のソックスを履いていた。

翌朝、誰よりも先に目覚めたルーシーは、静かに家を去ろうとするサマンサと出くわした。昨日の自分が気恥ずかしいので、そっと帰るつもりなのだ。
『ルーシー、あなたはきっと誰からも愛される人になるわ…』
ルーシーの頬にキスをして、サマンサは扉の向こうへ消えた。伯母がいつも何にイライラしているのか、ルーシーは少しだけ理解できた気がした。ふいに鼻の奥の方がツンとして、喉が小さく震えた――。
たまらずルーシーはサマンサのあとを追い、扉に向かって走った。
激しく開いた扉が、まだ向こう側にいたサマンサの後頭部を直撃して彼女のからだは3メートル先へふっ飛んだ。サマンサは顔中を土でいっぱいにして、ゆっくりと顔を上げた。
――『…ル、ルーシー…あなたは、…きっと誰からも嫌われる人になるわ…』