誰かから誰かへ、手渡されて広がる。

ブイ・クレスの輪ものがたり

大切な人を想う気持ちが手渡されて、広がっていく。
ブイ・クレスの輪を描いたショートストーリー。

メインイメージ

第2回

縁側のふたり

 ブイ・クレスをすすめてくれたのはお隣の高橋さんだった。ある朝、風邪気味の妻の代わりにゴミ出しをしている好雄さんに声をかけ「奥様お加減いかがですか。食が細くなったってうかがってたから」そう言って、家族で飲んでいるというブイ・クレスのことを教えてくれたのだ。
 妻の信子さんの体調が優れない日はお粥を炊いたり、簡単なおかずを作ったり。それまで任せきりだった掃除や洗濯も、好雄さんは少しずつできるようになった。でも、頑張って作った食事も信子さんはあまり食べられない日もあって、それが好雄さんはとても気がかりだった。


 しかし、今日は少し調子がいいみたいだ。縁側の日向ぼっこは、晴れた日の日課である。好雄さんは、冷蔵庫からブイ・クレスCP10を2本出して来てストローを刺すと信子さんに1本渡す。日差しに目を細めながら「おいしいわよね、これ」と信子さん。「飽きないよね、これ」と好雄さん。庭に向かってふたりはしばらく黙っている。「また温泉に行きたいわね」。「また行けるさ、元気になってきたもの」。「そうだ、受験勉強頑張ってる俊太にもこれ、送ってあげましょう」。俊太は末娘のところの長男だ。うん、いいね。来年はきっといい春になるさ。好雄さんは黙ってうなずく。

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